新婚旅行はエジプトさ!

まだ行ったことのない世界に行ってみたくて新婚旅行はエジプトに決定。時は1997年11月。当時シンガポールに住んでて、その頃はシンガポールからのツアー旅行は日本より全然安かったなぁ。

懐かしついでの思い出語り。

 

カイロのホテルにまずは到着。空から見えたエジプトの街がまずすべてモノトーン、建物も砂漠も何もかもがモノトーンに覆われてた印象がある。何しろ色がない。少しは木も生えてただろうに緑の記憶もない。

でも平気。新婚は七色に輝いているのさ!これから俺たちの波乱万丈の冒険の幕開けさ!

 

てなわけで、街探索。ホテルから徒歩圏内にあのツタンカーメンも秘蔵されている博物館があると聞いてフロントで場所聞いて出かけてみる。街には人も溢れてるけど、車が何しろすごい。車線お構いなしに隙間があれば突っ込む突っ込む。信号機は限りなく少なくて横断歩道も見当たらない。

博物館は目の前に見えてるんだが、道路が渡れない。渡ろうとするそばから車が勢いよく突っ込んでくる。

さてさて。。。おっ!そこの欧米人カップル、行ったか!うわっ、あっぷねー当たる当たる、ギリ!走れ!

走ったー渡り切ったー!思わず拍手。さて今度は俺たちの番だぜ。新妻の手をしっかり握り、さあ!あーーーっ!

っと戻れ。あぶない。ふぅ。。いやいや、ここは男見せないとでしょう。さあ!っと、っとっと、戻れ。いやあぶない。ふぅぅぅ。。。

いやホントですって。

あぶないんですよ。隙間なく突っ込みやがって。。よし、次行くよ。・・・いま!はい止まらない、行く!

ここも行く。かー、かすった。ブレーキ踏めよこら。あ~怖かった~。

たかがお向かいの博物館行くのに命がけ。エジプトは世界が違うわ。

チケット買うのに博物館前並びに行ったら、10人にひとりくらいは足びっこ引いてるか、腕三角巾で吊ってるし。

これって、、、そういうこと?

 

博物館広~。ってもまあ予想通り壁画だのミイラだの壺だの宝飾品だの石像だのがいっぱい。

数千年前だと思うと、そりゃ~すごいに違いない。あ凄い凄い。ツタンカーメンも人だかり。あ凄い凄い。

感動はするんだけど、とにかく広くて回ってるうちに喉かわくし、何見ても同じに見えてくるし、正直飽きる。

ものすごく価値のあるもの見せてもらってるのにねぇ。なんだろ。何か違うよね~というのは夫婦そろって同じ意見。

では場所変えよー!エジプト来たらピラミッドでしょ、やっぱり。

 

ホテル戻って、車チャーターして、ピラミッドツアーに!

殺風景なモノトーンの街をしばらく走ってくうちに、おーーーーー見えてきた。ピラミッドぉ。

でかいぞ。すんごいでっかいぞ。これが昔は燦然と輝いてたのか。

博物館の100倍感動。近づくにつれ、そのスケールに圧倒されまくり。まずピラミッドを俯瞰できる小高い丘へ。

そこでなにやら説明を受けるが、何言ってるかわからん。そのうちラクダに乗せられて、写真撮影。

いや俺らピラミッド見に来たんだから。スフィンクス見に来たんだから。ラクダ臭いし。ケツ痛いし。

え?金払え?あーーーマジ?やられた。そういうこと?ちくしょう、先言えよ!え?言った?わからんしぃ!!

やっとギザのピラミッドの下へ。へぇ!?マジでひとつの石で1m以上あるよ。こんなんどうやって積み上げるよ?

テレビでよく謎とき番組やるけど、これ、実際に見て思った。絶対無理。

宇宙人がどうのって、テレビでいう奴、アホが!とか思ってたけど、今なら信じる。これはヒトには無理な仕事です。

現代技術でも無理なんじゃない?

みんな登ってるよ。よし俺も登ってみよう。一段上がるのにも結構大変。せいのっと!数段登ったとこで警備員らしき人がマシンガンこっちに向けて、ストップストップとか言ってる。おい、よせ、銃を向けるな、汗が違うところから噴き出てきた。いま降りるから。まって、まって。。。

降りてから気付いた。金払えってね。ここもまたそういうことぉ?なーんか腹立つわ。怖かったけど腹立つわ。

銃向けられたのなんて生まれて初めてだけど、おしっこちびるくらい怖かったけど、でも腹立つわ。

なので、絶対払わない。登れなくたっていいもん。登りたくないもん。東京タワー登ったことあるもん。

筑波山登ったことあるもん。富士山だって5合目までは登ったもん!

悔しいから、登るんじゃなくて降りてやる。

そう。ピラミッドは中に入れるんだ。この穴はもともとある穴じゃなくて、盗掘した人たちが開けた穴だそうで。

狭い湿った穴(通路)を進んでいきます。ひとひとり通れるかくらいの穴です。ものすごいおしっこ臭がします。

まさか俺?いやいや、ちびりそうだったけどちびってないし。。。

奥には部屋のようなところに石でできた風呂おけのようなものが。いろんな説があるのだろうけど、断言します。ここはクフ王の墓ではなく、住居です。この石風呂がなによりの証拠です。砂漠の砂塵で砂まみれ。

どれだけこの風呂が重宝したことでしょう。

 

さあ!ピラミッド来たからにはスフィンクスにも行かなくちゃ。

ああ、ギザのピラミッドの裏手にあるの。だから見えなかったんか。

あ、先にカフラー王のピラミッド?いいよ、すぐ行こう、スフィンクス。あれ。なんか人や店いっぱいじゃないですか。

ガキがうようよ。知ってるよ。これが噂のバクシーシ隊ね。バクシーシって寄付だか喜捨って意味らしいけど、要は金くれ!と。ヤダよ。あーげない。付いてくんなー!うようようようよ。

バクシーシ攻撃はもうピラミッドの警備にしたって、土産物屋にしたって、道案内にしたって、らくだ乗りサービスにしたって、みーんなバクシーシバクシーシってすんごいんだから。全部がぜんぶあげてたら、そのうち俺らがバクシーシ!

て言わんならんやないか。みやげ屋では使えないボールペンとか展示会でもらったおみやげボールペンとか山ほど持ってきたおかげで、値引き交渉にかなり使わしてもらったけど、もう無いしな。ごめんな君ら、貧乏観光客なんよ、俺ら。

やー、スフィンクス

これまた、でっけぇー!シンガポールマーライオンがちゃんちゃらおかしいってなもんさ。

さすが本モノは違うね。こいつも昔は光り輝いてたんかね~。

このライオン君がツタンカーメンばりに黄金に輝いてたとこなんて、想像しても想像できない。

スケールが圧倒的過ぎ!エジプトすげぇぞ。これが数千年前にあったなんて。。。ドラえもん、連れてって。

 

日も暮れてきたのでこれまた圧倒的な夕日を見つつ、ホテルへ戻る。

なにげなくエレベータのボタン押し間違えて上階のPHに。押せてしまったのがそもそも間違いだと思うんだが、開いたとたん、黒くて迷彩着た人たちにマシンガン突き付けられて仰天!ひぇ~~~~ごめんなさい。

どなたかえらいさん泊ってるのね。押し間違いっすよ。そんな怖い顔しないで。ああまたちびりそうに。。。

んびっくりした~。あとでフロントに聞いたら“まいくるじゃーくそん”とか言うし。マジっすかそれ?

 

翌日からナイル川クルーズ&アブシンベルツアー。 いよいよセレブな感じかな?

ナイル川ったってこれもスケール感が。。。もう海。乗るのは優雅な大型クルーザー。個室だよ。

プールもあるぜ。飛び込んだら向こう側に頭ぶつけるぜ。

あ、でも優雅。風が気持ちいいです。カイロの喧噪と排ガスを思えば、これこそ望んでた新婚旅行ってやつさ。

ただし。。。暇だ。1時間たっても2時間たっても、4時間たっても、1日の終わりが来ても、、、ずぅ~っと

同じ風景。翌日もまた、同じ風景。

まったく別の意味で、スケールが違う。でかい。ひろい。こんな世界もあるんだね~

 

アブシンベル神殿までは車で1時間くらい。約100kmだそうだ。

ツアー客はわれわれのみ。若い運ちゃんは張り切りまくって、砂漠の一本道を時速100キロで飛ばす。

まさに砂漠の中の一本道。右見ても左見ても砂漠しかない。改めてまたスケールが違うぜ!と感動する。

しばらくすると、痛、ガツン!と揺れが。。どうやら一本道の舗装道路のところどころに穴があいてるらしい。

これパンクするぜ、下手すると。。。兄ちゃんそんな飛ばさんでも・・・と思うが、スローリィといってもニコニコして聞いちゃくれない。なんもない砂漠、ときどきボコッと衝撃。そんなドライブしてるうちになんだなんだあ?ボンネットから白い煙が・・そしてプスンプスンなぞとお約束のような音が・・・

車止まるぅ、はいエンストぉ、オーバーヒートぉ、ってシャレにならんぞおい。砂漠の真ん中。かれこれ30分くらい走ってきたけど、後ろからも、対向車にも一度もお目にかかってないしぃ。

マジぃ?とか言いながら、せっかくなので降りて砂漠のほうに歩いてみた。信じられない解放感。右も左も前も後ろも、ただただ砂漠。灼熱の炎天下砂漠で記念写真を夫婦で撮って。これも思い出さ。せっかくなので、記念の立ち●●●。。

最初は笑ってたけど、10分経ち、20分経ち、だんだん本気でやばい気がしてきた。

当時はまだガラケーの時代で、国際ローミングもしてなかったから、頼りはこの若い運ちゃんだけ。運ちゃん、電話する様子もなく(電話持っとらんのか?)たばこ吹かしてる。言葉通じないし、俺たちの運命は!!??

と、30分くらいたった時、後方から土煙が・・・車だ!助かる! よかったあ~、マジでよかった~。。。

来たのは警察のジープ。運ちゃんがなにやら説明してくれてます。ジープの後部座席乗れと。アブシンベルまで連れてってくれると。イエーイ!ありがとう!助かりました~。

フレンドリーなポリスマンでよかった。車も座席もさっきよりきれいだし・・・・と思いきや、なんと足元にマシンガンが。。。え~~いいの?こんなんで?暴発しない? なんか銃が当たり前の国、怖い。

もしかしたら弾は入ってないのかもしれないけど、でもね。。。日本やシンガポールじゃ考えられない。

民主主義、社会主義共産主義、資本主義、国によっていろいろあるんだろうけど、やっぱり中東はまったく別世界なんだな。こういうのは何主義?軍事主義とかいうの?

そーしーてーアブシンベル。こうも巨大な石像?ラムセス2世?太陽神ラー? いいや、いま俺は確信した。

古代エジプトには巨人が住んでたんだ。みんな身長10m級の巨人が。だからピラミッドとか作れちゃうわけだ。

だからこの石像も実は等身大なのさ。ゆうたら地球に記念に残しときましたってこと。

そう、宇宙人で、みんな宇宙に帰っちまったのさ。たぶんその頃地球になんか変動があって、こらいかん!

てんで母星にもどちゃった。だって、昔はエジプトも緑の楽園だったらしいし。恐竜はその巨人らのペットや家畜だったはず。ん?時代違うって?いやいや数千年というのがきっと間違ってるんだって。きっと数万年の間違いよ。きっと。。。

アブシンベルも満喫して、そろそろ帰らなきゃというとき、ふと気づいた。帰りの足がない。

乗っけてくれた警察はいずこかへ消えてしまったし、俺らの運ちゃんは砂漠の真ん中、車と一緒に放置。

彼は今頃ひからびてミイラにでもなってるだろうか・・・

さてどうする?たくさんいた観光客もそれぞれなんだか帰途についてるようで、駐車場も閑散としてきた。

優雅な新婚旅行のはずが、なんともサバイバルな。。。

駐車場にはまだ何台か大型バスが残ってる。近づいてみると、ドイツからの団体さんのようだ。

おお!ドイツ人なら英語が通じる。ヘルプアス。助けて。乗っけて~。

親切なドイツ人団体さんのバスに乗せてもらい、帰路に就く。一本道なんだからみんなナイル川のほとりのクルーズ船に戻るんだろうし、これで安心。。。のはずが、バスがいきなり急ブレーキかけて止まった。

なになに?どうした?ざわつく車内。ドアも開いて、みなドヤドヤと降りてく。

何があったかわからないまま一緒について降りると、、目の前でパジェロがサカサマに。事故ったばかりか。

半開きのドアからなんと!血だらけの男女が這って出てきた。 こりゃたーいへん!

すぐみんなでそうっと抱きかかえて、バスに乗せた。

来るときも、そうそう。いたるとこに穴開いてたしなあ。しかしひっくり返るってのは、、、

などと思っているうちけが人も乗せてバスは出発。ドイツの人も、正体不明の日本人カップルは同乗してくるわ、事故ったアメリカ人カップル拾うわ、びっくりだろーなあ。。。

思い出したよ。カイロでなぜだか足引きずったり、腕吊ったりしてる人がやけにたくさんいたっけ。

道路渡るとき轢かれでもしたかと思ってたけど、こういうことだったんだ。。。

ドイツ人おじちゃんとそんな話をしつつ後部座席でタバコをふかしてたんだ。当時はまだどこでも吸えたね。

ただ、それにしちゃ、煙いし、白い。そして焼け付いたにおい。。。うわー、またオーバーヒートかい!!

今回はまずい。けが人いるんだから。早くもどらなきゃ。。。と言ってるそばから、あーあ、止まった。。。

さあ、どうする?でも今回は世界有数の優秀な民族たるドイツの方々がいらっしゃる。

みんなでペットボトルの水集めてる。おー!そうか!水でエンジン冷やそうってか。さずがです。

ちょうど外は日の暮れるところ。そう。ここは砂漠のど真ん中。遮るものは何もない。雲一つない。

こんな夕日は今まで見たことがない!でかい、そしてその大きな大きなオレンジの玉が、薄い青から群青色へと綺麗なグラデーションを描いた空のはしにゆっくりと落ちていく。ゆっくりとその周りもより濃いオレンジに

染めながら落ちていく。

夕日評論家としては、断言していい。これは世界一の夕日だ。人の影が黒いシルエットを作って。ああもうじき沈む。その一瞬が地平線に一本の赤い線を描いて。。。消えた。

さあ、帰ろう。母なるナイルへ。

いや帰れない。母なるナイルへ。。。。バスは動いたが、まず怪我人を病院に連れて行かなきゃ。

病院はナイル川を左に見て、そちらには曲がらず、反対の小高い丘へ向かったそのてっぺんにある白亜の建物でまさに、ここです!なロケーション。ケガしたアメリカ人カップルも無事病院へ収容し、さあやっと船に帰れる。なぜかわからないけど先に出航してないか?などとは心配すらしてなかった。

病院から戻る丘をゆっくり周回しながら降りていく途中、同席させてもらったドイツのおっちゃんが、叫ぶ。

アレを見ろ!手を振ってるぞ?なんだ? 振り向いてみると、おおおおお!!!あの若い兄ちゃん、俺らの運ちゃん!

なんと、追いかけてきてくれたのか!

ドライバーさん、降りまーす!迎えが来ました! みんなの拍手に応えながら、感謝に何度も頭を下げ、手を振ってお別れすると、若い兄ちゃんの復活した車へ。・・・よく見っけたよなぁ。いいやつだよなぁ。冒険だったよなぁ。

おまえさん、ミイラにならんでよかったなぁ。いや感謝感謝。

 

船でも俺たちの帰りを心配してくれていたらしい。あまりにいろいろありすぎて、つたない英語じゃ説明しきれん。

とにかく謝るだけ謝って、さあナイトクルーズだ!目指すはルクソール、王家の谷。冒険はまだまだ続くぜ!

翌朝、まだ朝霧も晴れない早朝にたたき起こされた。ロビーに集まれという。

てっきり王家の谷への出発かと思ったら、ガイドさんがなんか深刻な顔して、“今日は残念ながら王家の谷には行かれなくなりました。“と。 ”昨日王家の谷でテロがありました。その場にいた全員が殺されたそうです。“

 

ルクソール事件ルクソールじけん)とは、エジプトの著名な観光地であるルクソールにおいて、1997年イスラム原理主義過激派の「イスラム集団」が外国人観光客に対し行った無差別殺傷テロ事件。別名、エジプト外国人観光客襲撃事件

1997年11月17日午前9時(現地時間)ごろ、ルクソール王家の谷近くにある、ハトシェプスト女王葬祭殿の前にて、外国人観光客ら200名に向けて待ち伏せていた少なくとも6名(もっと多かったという証言もある)のテロリストが、守衛を襲撃した後、無差別に火器を乱射し弾薬がなくなると短剣で襲ったという。この襲撃でスイス人、ドイツ人、日本人(観光客9名、添乗員1名)ら観光客61名が殺害された。

 

新婚でしたから。若かったですから。その時思ったのは、お~あぶね~。24時間差のニアピン。でもセ~フ。

俺らは生きている。そしてエジプト旅行満喫中! なんと能天気な、、、と思われるでしょう。

はい。能天気でした。エジプトの熱に侵されてました。それでもすぐに気づいたのは、家に連絡しなくちゃ、でした。

すぐに岸に出て、事務所のようなところで電話を借りて、双方の両親と、シンガポールの会社の同僚に“大丈夫”コールしたのでした。我々は、船の中にいて、外界と隔絶してたのでどんなニュースになってるのかまったく知らなかったのですが、日本のニュースでは、日本人カップル(それも新婚らしい)犠牲者中、2組だか3組がまだ身元不明です。。。と繰り返されていたそうで。ちょうど俺らはシンガポールからのツアーで、日本の会社も使ってないし、不明と言われておかしくなかったんで、親も同僚も、24時間寝れるわけもなく、安否確認をし続けてくれてたそうで。俺の会社の同僚で親友のオランダ人なんか、泣きながら大使館やら外務省やら電話しまくってくれてたそうで。。。すまない。お、俺たちは、、、、、目いっぱい楽しんでる。。。

やっぱ、のーてんきだわ。

 

死ぬ前にもういちど、エジプト行きたいなぁ。。。